【慰謝料|交通事故示談金増額交渉のポイント】

特殊な事情のもとでは相場より増額される

交通事故被害の損害賠償金のひとつである慰謝料は、基準ないし相場のようなものがあります。

 

しかし、特殊な条件のもとではそれより増額する判例が蓄積されてきました。

 

該当するような条件の場合は、慰謝料を多めに請求しない手はありません。

 

これについて紹介します。

 

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慰謝料が増額されるケース

この問題については、「交通事故 示談と慰謝料増額」(みらい総合法律事務所 あさ出版)が詳しいです。

 

この本によると、慰謝料が増額されるケースは次の4つの類型に分類されます。

 

  • 事故原因が加害者の悪質な不注意によるケース
  • 加害者の態度・対応が悪いケース
  • 被害者に特別な事情があるケース
  • 慰謝料を増額して賠償金額を調整するケース

 

これとともに「慰謝料が増額される事由があったのに増額されなかったケース」も紹介されていました。

 

順番にエッセンスを紹介したいと思います。

 

事故原因が加害者の悪質な不注意によるケース

下記のようなことが事故原因になっていて、しかも程度がひどい場合に慰謝料が増額された判例が14例出ています。

 

  • 飲酒運転
  • 大幅なスピードオーバー
  • 居眠り運転
  • 無免許運転
  • 信号無視
  • 消極的な殺意
  • 脇見運転

 

増額幅を見ると数百万円くらいが多いようです。

 

なお、「消極的な殺意」というのは、殺そうとまでは思っていないが、死ぬかもしれないと予想できることをやってしまうことです。

 

たとえば、抗議して車につかまっている相手をひきずったまま走行するなどです。

 

加害者の態度・対応が悪いケース

加害者が下記のようなことを行い、しかも程度がひどい場合に慰謝料を増額された判例が13例出ています。

 

  • 事実と異なる不自然な内容を主張する
  • 謝罪しない
  • 証拠隠滅をはかった
  • 救護せずにひき逃げした
  • 被害者を逆に訴えた
  • 被害者に責任を転嫁した

 

増額幅を見ると数百万円くらいが多いですが、1000万円というのもあります。

 

被害者に特別な事情があるケース

下記のように、被害者が特別に可哀そうなことになった場合に、慰謝料が増額された事例が8例出ています。

 

  • 事故によって妊娠中絶することになった
  • 将来の夢を断念することになった
  • 被害者の家族に大きな影響を与えた
  • 婚約が破棄された
  • 事故が原因で離婚した
  • 紛争が長期化した

 

「被害者の家族に大きな影響を与えた」というのは、障害児の母親が事故に遭って自分自身が障害者になってしまったために、子供の面倒が見れなくなり、その結果、子供の症状が悪化したというものです。

 

増額幅を見ると数十万円から数百万円くらいが多いです。

 

慰謝料を増額して賠償金額を調整するケース

下記のような場合に、慰謝料を増額した判例が12例収録されています。

 

  • 顔や体の露出面に傷が残った
  • 歯に大きな損害を受けた
  • 生殖機能に障害を負った
  • 臭覚の機能が損なわれた
  • 骨盤が変形した
  • 将来的に手術を行う可能性がある

 

顔や体の露出面に傷が残った「外貌醜状」の場合、接客を伴う仕事は難しくなります。

 

しかし被害者が少女でまだそういう仕事についていないなら、逸失利益は認められにくくなります。

 

実際には今後の人生の収入は大幅に減る可能性が大きいのに、逸失利益が認められない。

 

生殖機能を失えば人生の甚大なダメージですが、労働能力に影響するとは言えないので、逸失利益が認められない。

 

こうした損害賠償のルールの欠陥を補う意味で、慰謝料が増額される場合があるということです。

 

慰謝料が増額される事由があったのに増額されなかったケース

ここまで述べたような状況に該当し、慰謝料が増額されてもおかしくないのに、実際にはされなかった判例が4例出ています。

 

例えば、次のような場合です。

 

  • 被害者にも大きな落ち度があった
  • 被害者も飲酒運転をしていた

 

ほかには1600万円の相場のところを加害者が5000万円で申し出たのに、さらに200万円上乗せを要求して示談が決裂。

 

裁判になって判決では1550万円と相場より下がってしまった例も出ていました。

 

いくら相手が悪くても無制限に要求するとかえって損をする可能性があるということですね。

 

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